~暮らしの中の権利を守る~不知火合同法律事務所

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任意整理と調停

1. 安易な代払いは有害

 借金をたくさんかかえて支払いに行きづまった人に同情して、また取立を必要以上に恐れてサラ金業者へ元利金をそのまま支払ってやる人がいます。しかし、それは決して良い結果をもたらしません。本人がどれだけ反省しているのか分からないのに、ともかく借金をなくしてしまおうというのでは、本人の甘えを助長するだけです。「自分が支払えなくなったら、誰かが助けてくれる」。そんな安易な気持ちを本人が持っているうちは、きっと何度でも同じようなことが繰り返されるでしょう。
 代払いをするとき、本人が「これで全部だ」というのを信じて支払ったところ、実は2~3件、本人が隠していた、というのは実によくあるパターンです。少しでも残っていると、次の借金の火種になります。
 本人に代わって返済するときには、「今後は絶対に本人に貸さないようにしてほしい」とサラ金業者に頼みこみます。でも、サラ金業者にとって、本人は「優良債務者」としか見えません。いざとなれば身内の人間が代払いしてくれるのですから、回収に不安がないわけです。それにお金を貸すところは、ヤミ金や暴力金融を含めていくらでもありますから、本人が申し込みに行けば、すぐに借りられるのです。
 貸金業協会に「貸付禁止」を登録してもらうよう依頼することもできますが、この登録をしたからといって安心することは決してできません。協会に加盟していない貸金業者はたくさんいますし、貸してくれるところはいくつもあるのが現実なのです。

2. 一括返済か分割返済か

 任意整理による解決法というのは、基本的には親族の援助を受けたりして、一括または分割して返済しようというものです。このとき、約定の高い金利ではなく、利息制限法を活用します。つまり、それまで支払ってきた利息額を利息制限法に定められた低い利率で見直して、それを上回る分については元本の支払いに充てられたものとして計算します。これを元本充当計算と言います。この元本充当計算には、最高裁判例もあって正当なものなのですが、貸金業者は弁護士を代理人として立てないとなかなか認めないという現実があります。また、貸金業法第43条によって、元本充当計算を認めないと主張するサラ金業者が少なくありません。元本充当計算をすると、たいていの場合、支払うべき残金はかなり減ります。そこで、その金額を一括して支払えるのか、分割して支払うのか、ということを決めなければなりません。分割して支払っていくという場合には、原則として、3年から最長5年ほどで完済できるようにします。それより長いと、なかなか債権者は応じてくれません。

特定調停

 「サラ金調停」では、関係する多数の債権者を呼び出して、一括して調停をやってもらえることになっています。これを特定調停と言います。このときには債権者が多い所にある裁判所に申立をすればよいのです。調停申立をすると、裁判所から各債権者あてに調停の呼出状が送られます。それでも債権者から債務者に督促がいくことがあります。そのときには、「このままでは返せなくなりましたので、調停の申立をしました。ぜひ、ご協力ください」と答えるようにします。
 第1回の調停期日は3週間後くらいになります。それまで支払いをストップして、お金をためておいた方が解決が早くなります。調停申立をしたあとは直接取立ができないことになっていますが、実際にはなかなか止みません。調停がまとまらない業者は後まわしにして、ともかく少しずつでもまとめていく方がよいと思います。まとまらなかった業者とは、あとで交渉するしかありません。
 調停がまとまると、裁判所が調停調書をつくります。これは判決と同じ効力をもっていますから、支払いを怠ると差押を受けることになります。ですから、分割金の額は無理をしないことがくれぐれも肝心です。
 ただし、分割返済には問題もあります。3年とか5年のあいだ、決められた金額を払い続けていくのは、なかなか容易なことではありません。長い間には、家族の病気や不慮の事故がおきたり、失業したりして収入が減って支払えなくなることもおこります。そんなときに無理をして返済しようとして、また借金しては何にもなりません。さらに、下手をするとサラ金業者との腐れ縁をつくることにもなりかねません。

3. 債権者への通知

 弁護士は委任契約が成立すると、直ちに債権者に通知を出して示談交渉を始めます。
 解決資金が明らかに不足している場合でも、差押の対象となるような資産がないときには、破産手続における配当と同じ考え方で、たとえば「3割配当」で示談が成立することもあります。

金融庁ガイドライン

 貸金業法21条1項9号によれば、債務処理に関する権限が弁護士に委任された旨の通知を受けたあとは、サラ金業者は債務者本人に正当な理由がなく直接取立をしてはならないことになっています。クレジット会社についても同じです。
 これに違反した業者は処罰の対象になりますから、刑事告訴をしたり、監督官庁に対して営業停止などの行政処分を求める申立をします。

債権者から債権届を出してもらう

 債権者に通知を出して、債権者からは債権届を返送してもらいます。
 債権者は書替前の状況をなかなか明らかにしたがりませんが、法律上は10年前にさかのぼることが出来ることを十分に説明して、書替前からの貸付と返済状況をすべて明らかにしてもらいます。

債務者本人とつき合わせる

 債権者から債権届が送られてきたら、債務者にそれを示して確認してもらいます。領収書などが残っていれば、それらの資料とも十分につき合わせます。書替前の分が落ちていないかどうかが、ひとつのチェックポイントです。
 また、このとき改めて借金の原因や使途を確認しておくことも大切です。こういうことは何回でも納得のいくまでやることが良いのです。

業者に対して帳簿開示を要求する

 貸金業者には商法上の商人として自ら帳簿を開示すべき義務があり、貸金業法第19条の2によって、債務内容について開示を求められた時は協力する義務があります。
 債権者が、債権届を出してこない場合には、届出を迫る催告書を出します。それでも出さない場合には、とりあえず債務者側の資料のみに基づいて元本充当計算をして、その結果を支払呈示します。それでダメなら本裁判を提起するしかありません。

 

4. 元本充当計算をする

 借り受け状況と元利金の支払い状況が判明したら、利息制限法所定の利率を上回る部分を元本返済に充当する計算をします。パソコンで元本充当計算ができるようにしていますから、すぐに結果が分かります。
 出資法と貸金業法が改正されましたが、利息制限法がなくなったわけではありません。利息制限法は、現在でも有効に生きている法律です。
 利息制限法は、返済期限までの利息は、年に

10万円未満 2割
10万円以上、100万円未満 1割8分
100万円以上 1割5分

 返済期限後の遅延損害金は、その2倍で、年に

10万円未満 4割
10万円以上、100万円未満 3割6分
100万円以上 3割

までとなっています。これらを上回る約定金利を支払った場合には、最高裁判所の判例(1963年11月18日判決、1966年11月13日判決)によって、その差額は元本返済に充当されたものとみなされ、もし元本充当計算の結果、過払いとなれば不当利得として返還請求することができます。この不当利得返還請求権の消滅時効は10年とされています(最高裁1980年1月24日判決)。貸金業法の施行後も、これらの判決は生きています。
 元本充当計算の結果については、書面で債権者に通知を出します。

 

5. 示談成立

 債権者との間で示談交渉がまとまれば、直ちに示談書を取り交わして示談金を支払い、借用書を取り戻します。
 債権者が近くにいる場合には、直接私たちの法律事務所に来てもらって示談書を取り交わし、借用書と引き換えに示談金を支払ったり、過払い金を返還してもらいます。債権者が遠方の場合には郵便で処理します。まず、こちらから示談書2通を送り、示談書1通と借用書(もちろん原本です)を返送してもらいます。示談書と借用書が届いたら、すぐに債権者の指定した銀行口座に示談金を振り込み送金します。

 

6. 本裁判提起

 債権者が示談交渉に応じない場合には、やむなく本裁判を提起します。これには貸金業者であるのに債権届を出さない場合、書替前の支払い状況を明らかにしない場合、貸金業法第43条の適用をあくまで主張して元本充当計算を認めない場合などがあります。
 本裁判は、手持ちの賃料だけで計算してすることになりますが、過払金(不当利得金)の返還請求であったり、支払うべき残債務額の確認を求めるというものです。また、公正証書が作成されているときには、それによって強制執行がされないようにするため、請求異議という裁判をおこします。
 すでに債務者が給料差押を受けている場合には、強制執行停止の申立もしますが、この場合には、供託金を積まなければならず、そのうえ、債務者には差押分の給料は手渡されない(債権者にもわたらず、雇主が預かっておくことになります)という問題点があります。

貸金業者には商業帳簿の提出義務がある

 債務者が領収書などをほとんど持っていないことはしばしばあります。しかし、心配はいりません。債務者の方で記憶にもとづき支払い状況を主張すれば、被告となった貸金業者は認否しなければなりません。単に、「原告主張を否認する」というだけではダメなのです。
 また、領収書が何枚かしかないときに、はじめからそれを書証として裁判所に提出するのは考えものです。一部の不心得な債権者は、提出された領収書にあわせて帳簿を書き直してしまいます。だから、先に貸金業者に商業帳簿を提出させ、それを手元にある領収書でチェックするようにします。
 貸金業法第19条によって、貸金業者は貸付ならびに弁済についての帳簿を備付けなければならないことになっています。
 つまり、債務者の方で金銭の貸借ならびに支払い状況について主張している以上、貸金業者は積極的にその認否をすべき義務があるし、それを裏付ける帳簿を提出する義務があるわけです。

文書提出命令の申立

 それでも、債権者が任意に帳簿を開示しようとしない場合には、民事訴訟法第220条2号などにもとづき、文書提出命令の申立をします。裁判所が文書提出命令を出したのに債権者が帳簿類を提出しない場合には、債務者側の主張が真実と認められることになっています(民事訴訟法第224条)。

残元利金の供託

 裁判しているうちに和解が成立すれば一件落着となりますが、判決において残債務額が確認された場合には、判決が確定したら法務局で残元利金を供託します。この場合には、そのうえで貸金業者に対して借用書の返還を求めます。貸金業法22条によれば、貸金業者は「遅滞なく」借用書を返還しなければならないことになっています。

進行状況の把握

 このようにして解決を進めていくわけですが、示談進行表にその都度すぐ記入します。任意整理の場合には、解決資金が不足すると大変なことになりますから、弁護士は依頼者別の通帳を作って、預かり金の出入を記帳したうえで残額を把握しておくことと合わせて、この示談進行表によって進行状況を十分把握しておくことが不可欠です。

7. 取立防止

取引状況を記録する

 弁護士を通じた交渉では債権者にとってうま味がないので、債権者のなかには債務者本人と直接交渉しようとするものがいます。その可能性がある場合には、本人と家族に、取立を受けたときの状況を記録するようにアドバイスします。
 債務者本人や家族としては、電話がかかってきたり直接押しかけてこられても、メモを取りながら応対するだけの心の余裕が必要です。テープレコーダーに録音しておくのもよいでしょう。

取立防止は本人の心がけ次第

 無法な債権取立行為は、もちろんやめさせなければなりませんが、実は債務者本人の心がけ次第ということが多いのです。「弁護士に一任しています。私は何も申し上げることはありません」とキッパリ断れば、どんな貸金業者でも引き下がらざるをえません。それなのに、弁護士に一任していることも言わないまま、ぐずぐずと債権者と応対していれば、債権者はすぐにその弱点を見抜いて執拗な取り立て攻撃をかけてきます。
 いったん解決に踏み出した以上、債権者との交渉はすべて弁護士にまかせ、弁護士と連絡を密にしつつ債権者に対しては毅然として対応することが肝心です。

警告書と法的対抗措置

 無法な取り立て状況がなされたときには、すぐ警告書を送りつけます。また、急なときには、福岡県庁の商工部経営金融課に電話で申し入れをし、緊急に行政指導するよう要求することもあります。貸金業法を活用するのです。貸金業者にたいして業務停止や登録取消などの行政処分がすぐ出るわけではありませんが、立ち入り調査がなされたり行政指導がなされたりします。なお、県知事登録でない業者の場合には、福岡財務支局に申告します。
 夜間の取立行為で目に余るときには、すぐ110番してパトカーを呼びます。これも、警察官がやってきて事情聴取するだけのことが多いのですが、それでも債権者の無法取立に対しては大きな牽制効果があります。
 取立行為禁止の仮処分を申請することもあります。これは、警察が「民事不介入の原則」を口実としてなかなか動いてくれないときに申請します。
 いずれにせよ、債権者とも最終的に金銭貸借についての決着をつける必要がありますから、無法な取立を繰り返す業者に対しては、金銭貸借とからめて損害賠償を求める本裁判を提起します。このとき、残債務があれば、損害賠償請求の金額と対当額で相殺して、その残額を請求することになります。

 

8. 終結

 債権者が示談交渉に応じない場合には、やむなく本裁判を提起します。これには貸金業者であるのに債権届を出さない場合、書替前の支払い状況を明らかにしない場合、貸金業法第43条の適用をあくまで主張して元本充当計算を認めない場合などがあります。
 本裁判は、手持ちの賃料だけで計算してすることになりますが、過払金(不当利得金)の返還請求であったり、支払うべき残債務額の確認を求めるというものです。また、公正証書が作成されているときには、それによって強制執行がされないようにするため、請求異議という裁判をおこします。
 すでに債務者が給料差押を受けている場合には、強制執行停止の申立もしますが、この場合には、供託金を積まなければならず、そのうえ、債務者には差押分の給料は手渡されない(債権者にもわたらず、雇主が預かっておくことになります)という問題点があります。

貸金業者には商業帳簿の提出義務がある

 任意整理の方法で無事に全部の債務を整理し終わったときには、委任契約書にもとづいて弁護士費用をふくめて清算します。私たちは、任意整理をはじめる際の預かり金には、この弁護士費用も見込んでおくように心がけています。示談進行表と通帳による残額管理は、そのためにも不可欠です。
 受任した弁護士と「大牟田しらぬひの会」の相談員は、終了に際して、今後再びクレジット・サラ金に手を出さないようにすること、借金の原因をよく反省して生活態度を改めること、仕事や家庭に生きがいを見出すことなどを心をこめて訴えるようにしています。
 なお、示談進行表と清算表、そして示談書は一括して保存しておきます。